日別アーカイブ: 2018年3月6日

AIにデザインの仕事が奪われる?のか?かも?

最近はニュースやワイドショーでも、「AI」に関する話題が多くなりました。昭和生まれの私からすると、30年位前にもAIブームって無かったっけ? と思うのですが、ネットやITの発達で、現在の方がより説得力を感じさせることがあるようです。

デザイン関係の勉強会やセミナーなどでも「AIにデザイナーの仕事が奪われるのでは?」みたいな話になることがあるのですが、私なりに考えてみました。

このような話題になった時に、デザインの造形的な部分、色や形といったところをAIに取って代わられる、となることが多いのですが、私はそれよりも前段階で、影響を受けるのではないかと考えています。

いま、デザインの世界では「お話し」「ストーリー」が重視されています。どういうことかというと「なんとなくこのデザインになりました」ではなくて、なぜこうなったのかを明確に説明できる、それに至るまでの経緯やバックグラウンドが、しっかりしていなければならないということです。平たく言うと、コンセプトや企画ですね。

その背景としては、パソコンの普及で手軽に(良し悪しは別として色や形という意味での)デザインが出来るようになったことや、低価格のロゴ制作に代表されるネットのデザインサービスが広がったことで、それらではフォロー出来ないコンセプトや企画がしっかりしたところで、既存のデザイナーが差別化を図っているからです。

私がAIに奪われると思っているのは、このコンセプトや企画の部分です。

例えば、AIが過去100年に渡るデザインや美術の動向、広告の変遷、流行やライフスタイルの変化、経済の動向など、あらゆるデータを蓄積したとします。いわゆるビックデータですね。それら膨大なデータを基に、今後の予想としてコンセプトや企画が出てきた時に、人間デザイナーが考えたものが説得力を持てるのかな? と。

私も20年ほどデザインの世界で仕事をして、それなりの知識や経験はあるつもりですが、あくまでも自分が接したり、見聞きしたものの範囲内でしか判断できません。100年分のデータを、一人で身につけて分析するのは無理です。

敵うか敵わないかよりも、取引先やクライアントが説得力を感じるのはどちらか? ということです。AIはデータを基に計算をしているだけとの意見もありますが、たかだか20年経験のデザイナーの分析よりも、100年分のあらゆる方面の情報から分析した結果だと、後者の方が説得力を感じないでしょうか。

もちろん、AIの精度がどこまでか未知な部分もあります。でも、例えば無難な分析や尖った分析、敢えてハズした分析とか、短時間で数パターンを導き出せるときが来るかもしれません。そうなれば、デザイナーが重視しているコンセプトや企画の土台が、AIに奪われるのではないでしょうか。コンセプトや企画を考えるには、分析する能力が必要ですからね。

いつかデザイナーには「コンセプトとデザインのラフはAIの分析結果を基にして、最後の仕上げだけやって」というような依頼が来るかもしれません。デザイナーが「私の考えでは、こっちの方が良いと思うんですけど」と言ったところで、「AIの100年分のデータを基にした結果だから」とか言われて、デザイナーの考えなど入るスキのない状態になるかもしれません。

例えば、人のアイディアでも、30年前だったら受け入れられなかったことが、今なら興味を惹かれることもあります。同じようにAIから突拍子もない案が出てきたとしても、時代が変われば「なるほど!」「面白い!」と感じるのは受け手側次第です。

私達の意識も時代と共に変化します。その時、デザイナーが考えたのか、AIなのかは関係なく、成功事例が2〜3個出てくれば、AIは面白い!と感じる空気が、一気に広がるかもしれません。今でもGoogleの検索結果に、何の疑問も感じず利用しているんですから。


AI vs 教科書が読めない子どもたち [ 新井 紀子 ]