ネットショップは需要と勝算があるかの吟味が必要 1

ネットショップは実店舗を開くのに比べれば、少ない出費でオープンできるのですが、その需要と勝算があるかは、事前にしっかりと吟味する必要があります。その点に関することを、私の実体験も含めて記しておきます。

私がネットショップの運営に関わるキッカケは、以前から取引があった企画会社がネットショップをやってみたいので、ネットとWebがわかるスタッフとして協力して欲しいと、声をかけてもらったことが始まりです。

当時、私はWeb制作の経験があったので、サイト制作や商品の撮影もある程度出来たのと、私もネットショップの運営に興味があったので参加することにしました。巷では「売れるWebデザイン」という言葉が使われていますが、Webサイトの製作者でも、実際に売ることに関わっているデザイナーは少ないので、私にとっても良い機会でした。

その企画会社は20年以上、家庭用品メーカーから製品の企画・デザインを請け負っていました。その会社も企画・制作に加えて、自らも売ることをやってみたいとのことでした。過去にいくつもヒット商品を開発していたため、メーカーとの良好な関係もあり、直で仕入れができる環境もありました。

そういった経緯もあったため、オープン当初に扱っていた商品のほとんどは、その企画会社が開発して、メーカーに提供した商品ばかりでした。具体的にはお弁当箱や清掃用品で、すでにスーパーやホームセンター等でも販売実績のある商品が多かったので、それなりに反応はありました。出版社からショップへ問い合わせがあり、雑誌の記事に取り上げられたこともありました。

ですが、売上は伸び悩んでいました。というのも、そもそも商品の選定に限りがありました。先に書いたように、企画会社とメーカーとの関わりを前提にした商品を多く扱っていたため、私達ショップサイドが扱いやすい商品しかなく、それらは一般の人が欲しいものとは限らなかったからです。

ここは1つ重要なポイントです。ショップをオープンさせる場合、「これを売りたい!」といったショップ側のコダワリは必要です。自分が好きになれない商品を扱っても、閲覧者に熱が伝わらず購入には至りません。

ですが、ショップの存続を考えると、店側のコダワリだけでは運営を維持することは出来ません。わかる人だけ買ってくれればいい、というようなマニアックな商品も確かにありますが、何人かのスタッフを抱えて、人件費や維持費がかかってくるのであれば、ある程度の売上を目指す必要があります。

そこで、ショップでは商品展開を広げることにしました。オープン当初は直取引の商品に限っていたため、50アイテムくらいでしたが、ネットで仕入れをするようにして、最終的には300アイテムまで増やしました。

ただし、闇雲に商品を増やしたわけでなく、商品開発に関わってきた企画会社の目利きと経験から、アイデアの効いた、消費者からの見え方を意識した商品をセレクトしました。アイテム数が当初の6倍ほどになり裾野が広がったおかげで、売上も4〜5倍に伸びました。

この経験から言えることは、ショップ側が扱いやすい、売りやすい商品を扱っているだけではダメということです。先に書いたような、店側のコダワリも必要で、一人で運営して全ての責任を被れる状況ならそれも良いでしょうが、長い目で見ると限界もあります。

外から見て欲しいと思うもの、時には流行っているものを取り入れることも必要で、古くから言われることですが「お客様目線」が必要になります。

そういった部分で、ネットショップで扱う商品が、本当に需要があるかどうかの吟味が必要です。自分は好き、良い商品と思っていても、それが世間の感覚と合っているのかどうか。人はなんの根拠もないのに、自分のセンスを過信しがちです。特にこれまで、直接物を売った経験がないのであれば、人一倍冷静に考えなければなりません。

続く


需要予測の基本 [ 山口雄大 ]


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