写真はプライベートで制作した、アート作品。
ではなくて、あるメーカーさんから依頼された、清掃用品を使った汚れ落としの比較動画を撮影するための小道具で、汚れを模したものです。
最近はスマホでも簡単に動画の撮影・編集ができるので、ちょっとした動画ならクライアント側で内製化しているところも少なくありません。現に今回依頼をいただいたメーカーさんも、これまで社内で撮影されていました。
ただ、今回のような製品の特長を比較してわかりやすく伝えるために、どういうった見せ方をすればよいのか、少し手間のかかる撮影に限ってはご依頼を頂くことがよくあります。
このメーカーさんも過去に動画をいくつも制作されており、当初は私が撮影・編集をしていました。それが、何度か現場に立ち会われている間に、ノウハウを理解されたのでしょう。その後、私に撮影の依頼が来ることはなくなり、社内で撮影・編集した動画へ、BGMの追加とWebへのアップだけ依頼されるようになりました。
それが先日、ある動画を受け取った際、内容を確認したところ初見ではわかりづらい部分が何点かありました。
具体的には、映像に対してテロップが表示される部分で、カットの時間が短くテロップを読んで映像を見ようとすると画面が切り替わったり、複数の製品を持ち替えているシーンでは、事前に製品を見せないため何の動作をしているのかわかりにくい部分がありました。1秒でも製品の姿を見せるだけでわかりやすくなるのですが、それがありませんでした。
その部分を私の方で静止画を差し込んで時間の調整をしたり、画面の端に製品をフレームではめ込んだりして、内容が理解しやすように編集しました。
この作業は事前の相談なしに私の判断でやりましたが、編集内容に納得していただけ、最終的には編集を加えた動画が正式採用されました。そして、今回再び動画の撮影・編集の依頼が来たのです。
パソコンやアプリケーションが低価格になったことで、動画や印刷物も外注せずに内製化されることが多くなっています。時代の流れとして仕方がありませんが、内製化によってコストを抑えられた、自分たちで出来た、といった部分に目が行きがちで「情報の整理」や「見せ方」が至らないケースが少なくありません。
これは今回のクライアントに限らず、街で見かける広告やパンフレット、新聞の折込チラシ、Webサイトでも見られます。
動画であれ印刷物であれ、完成までには時間がかかります。制作サイドはその間、何度も同じ内容を目にしているため客観的な視点を失いがちです。最終判断も内容を充分理解している自分たちで行うため、初めて見る人にはわかりにくく、伝えたいことが伝わらない結果を招くことがよくあります。
例えば、人との会話でも言っていることがよくわからないケースは、物事の整理ができていない状態で喋っていることがあります。気持ちだけ先走って順序立てて話さないので、聞いている方は「何が言いたいん?」となり、喋る方も「なんでわかってくれへんの?」となります。
先程の「情報の整理」と「見せ方」は表裏一体です。
「情報の整理」は、「状況の把握」と言い換えることができます。状況の把握、つまり課題や問題点、やるべきことを把握することができれば、おのずと「見せ方」もどうすればよいのかも浮かんできます。